合格体験記(岩崎 真朗)

1.はじめに
 私は合格まで足掛け6年の歳月をかけました。これだけ月日がかかったのはそもそも私が「勉強の仕方」を知らなかったことと、「自分に甘いという性根の弱さ」に勝てなかったことが原因でした。
 この6年間は中小企業診断士の資格取得というよりは、「勉強の仕方習得」と「自分との戦い」だったといえます。
 そんな私に、勉強の仕方を教えてくれた弱小企業診断士勉強会の関係者の皆様、本当にありがとうございました。この場を借りて、改めて感謝の意を示したいと思います。

2.合格までの道のり
 私の受験暦は下記のとおりです。

職場の休みが土日ではないため、予備校の通学講座にも通えず、勉強会もほとんどがML(メーリングリスト)参加でした。
予備校も通信教育なので、講師とフェイス・トゥ・フェイスでの情報交換ができない分、  解法テクニックなども習得が遅れがちでした。また、勉強会でも、顔を出せる日は多くなかったので、勉強仲間との情報交換が十分でなかったりして、過去問への取り組み方が間違っていたりしました。
ただ、もっとも足りなかったのは合格への執念と自分への厳しさだったのではないかと思います。

■ 平成19年度
弱小企業診断士勉強会で一緒に1次を合格を目指し、合格後に2次初心者として弱小企業診断士勉強会内で「超弱小隊」という4・5名のチームを作り、各事例の方向性を簡単にまとめ、設問後との解答の方向性を論議し、30分で解答を書くという方法の勉強会を進めましたが、そのうち2名が合格し、さびしく悔しい思いをしました。

■ 平成20年
2次に専念し、全事例の全年度の過去問題を詳細に分析し、自分なりのベスト解答を作成することを行いましたが、それに時間を掛けすぎてしまい、2次の解答プロセスが確立できず、本番では表面的な記述・対応に終わったことで、前年よりも成績を落として終了しました。

■ 平成21年
1次から再受験でしたので、1次までは1次に専念しました。ただし、実行した勉強は過去問だけでした。過去問題を論点別に整理したツールを作り、3回転ぐらい行い、苦手な論点を受験機関の模範解答やテキストで調べたりして理解を深め、習得する方法をとりました。この方法は非常に有効だったと思います。経済学は92点を取る事ができました。
2次試験対策としては、昨年つくったツールを活用しリライトする過程を通じて、過去問題の戦略パターンや解答要素のパターンを把握することに努めました。この結果、2次試験で問われている論点は平成13年以来ほとんど変わっていないことがわかりました。(年度別パターンの変化はあります)、9月ぐらいからは解法プロセスに基づいた80分ガチンコ解きを実施しました。この年はブログでもリアルでもたくさんの勉強仲間ができましたが、この年にほとんどの方が合格され、またもやさびしく悔しい思いを味わうことになりました。

■ 平成22年度
公私共に各種トラブルに見舞われ、年初から8月ぐらいまではほとんど勉強できませんでした。8月ぐらいに落ち着いたので、あわてて2次試験の準備を始めました。具体的には、80分ガチンコ解きをベースに解法プロセスを確立することを行いました。また、弱小企業診断士勉強会のMLを中心に、勉強仲間と相互添削を行うことで、因果関係に留意した解答の書き方や自分の悪い癖などを把握・修正できました。でも、結局、解答骨子を完全にまとめてから解答を記述するという解法プロセスは最後まで確立できなかったため、本番時も設問と与件文を把握したら、直接、解答用紙への解答を始める方法をとりました。最後は、「これが自分のスタイルだ」と開き直っていました。

■本試験当日
事例Ⅰ~Ⅳどれをとっても簡単なものはありませんでしたが、最後の1秒まで使ってすべての解答欄を埋めることができました。また、少しだけ、各事例企業の全体戦略を意識した解答を書けたと思います。今年は例年に比べて手ごたえが悪かったので、再現答案用のメモなどを書く余裕もありませんでした。それだけ、全力投球したので、本試験の事例Ⅳ終了後はしばらく立ち上がる事ができませんでした。
しかし、実際再現答案を書いてみると、与件文は読み落とすわ、設問要求に応えていないわなど、アラがたくさん見えてきて、前年よりも手ごたえが悪かったため、不合格を確信していましたところ、なぜか筆記試験に合格してしまいました。

■ 合格の決め手
自分が合格できたのは以下の理由だと思います。これがなかったら、あと何年受験することになったかわかりません。
★受験テクニック面
① 1次試験も2次試験も過去問題しか取り組まなかったことで、中小企業診断試験で問われる頻出論点や傾向が把握できた。
② 解答記入時に因果関係を丁寧に表現する書き方をすれば読み手がわかりやすいと気づいたこと
③ 人が良いという解法プロセスでも、自分が何度も繰り返して会得できないものは無理に会得する必要はないと割り切ること。

★精神面
① 昨年までの不合格だったときに「合格するまで受験してやる」と気持ちを切り替えたことも挙げられます。途中でやめなければいつかは合格します。
② 今年はトラブル続きだったので、1つぐらいはいいことが欲しくて、例年よりも合格に対する執念は強く持っていたと思います。だから、本試験でも全力を出し切ることができ、終了後に立てなくなったのだと思います。
③ 今年は、わからないことはわかるまで聞く姿勢をつらぬきました。MLなどで相手の書いてきた内容がわからないとき、あるいは納得できないとき、以前はわかったふりをして流していましたが、今年は徹底的に確認し、相手が何を言いたかったのかを100%把握するようにしました。
④ 今年は、何のために中小企業診断士になりたいのかを再確認しました。その結果、自分は心底、中小企業診断士になって、将来、日々がんばっている中小企業の社長さんのお手伝いをして、元気のない日本のさまざまな地域の活性化に寄与したいんだという強い思いを確認しました。

最後に
私にとって、中小企業診断士試験に挑戦することは、資格を取得して世間のお役に立ちたい、エンプロイヤビリティーを高め将来のリスクヘッジをしたいということに加え、弱い自分の性根との真っ向勝負の場であったといえます。まずは、筆記試験に合格したということで、第1ラウンドは勝利したといえますが、これから先、高いレベルで心技体がそろった診断士になっていくためには、日々、切磋琢磨していくことが必要です。つまり、永遠に自分の性根との戦いを続けていくことが必要だと思っています。
中小企業診断士試験を単なる資格試験だから合格しさえすればよいのだと思うか、診断士にふさわしい人間になるために勉強するんだと思うのかは人それぞれだと思いますが、個人的には、後者のスタンスで取り組んだほうが、はるかに人間として成長できるような気がします。自分との戦いはつらく厳しいですが、あえてその道を選ぶ方は、弱小企業診断士勉強会に入り、仲間と苦楽を分かち合い、自分に負けないようにがんばって勝利を勝ち取ってください。